
無秩序なカオスと清廉なエレガンスが混沌とした不思議な国、タイ。訪れたのは、これが3度目だ。行く度にタイの魅力のとりことなる。リタイヤメント移住やロングステイ先として、タイを選ぶ人が増えているという。物価が安いし、距離的にも日本に近く、ひょいと飛行機に乗って気軽に出かける感覚があるからだ。タイ人の9割が仏教徒なのも、同じアジア人同士として親近感が持てる。これも心休まる理由のひとつだろう。 プミポン国王は去年、在位60周年を迎え、来年は80歳。いたるところで国王の大きなポスターを見かけた。民家や商店にも、必ずと言っていいほど、国王と王妃の写真が飾られている。 映画の上映前には、国王の活動状況を伝えるビデオが上映され、人々は起立して国歌を聞く。農業研究者でもあるプミポン国王は、農地開発や人材育成などを通してタイへの貢献度も高く、国民から絶大な支持と敬意を払われている。12月は国王の誕生月なので、タイ人は国王のテーマ・カラーである黄色のシャツを着て、国中が黄色に染まるほどだ。これほどまで国民に愛されているプミポン国王は、現在も精力的に各地を訪問して、国民と身近に接している。 貧富の差が歴然とした国なのに、どの顔も穏やかだ。微笑みが美しいタイの人たち…。道端に寝そべる犬たちでさえ、のんびりと悠長な日々を暮らす。吠えることを忘れた幸せな犬たち。
タイ料理は奥が深い。バンコクをはじめとする中南部の料理は、ココナツミルクを使い、香辛料が効いた激辛が多い。トムヤンクン(エビ入りスープ)、トムカーガイ(ココナツミルクに鶏肉入りスープ)は、もうお馴染みの代表的なタイ料理だ。 「北方の薔薇」と呼ばれる古都、チェンマイはフランスを筆頭にヨーロッパからの観光客を大いに満足させるグルメの宝庫でもある。新鮮な野菜や果物と、薬草もふんだんに使う料理は、舌が喜び、身体が元気になる医食同源だ。 毎晩にぎわうナイトマーケット。猥雑なエネルギーに満ちたマーケットがあれば、ヨーロッパの高級ブティックが集中するおしゃれなモールもある。1日24時間が元気に回り続ける眠らない町。
バンコクやチェンマイは、建築ブームの真っ只中。モダンなコンドミニアムや一戸建ての新興住宅地が、次々と建設されている。高層ビルも驚くほど増えている。外国人は土地付きの家は買えないが、コンドミニアムは購入できるので、海外からリタイヤした人たちが、我も我もと不動産を購入するのがトレンドだ。
昼間から堂々と見事なボディラインを誇示しながら闊歩するレイディボーイ。日本語でニューハーフと呼ばれる、性転換手術した美女たちだ。この国では、あいかわらず性産業が盛んである。外国人観光客の需要がある限り、売春の供給は減ることはない。堅気の給料の1か月分を一晩で稼ぐことができるからだ。エイズが多いこと、HIV母子感染で生まれてくる子どものことを思うと、胸が痛む。それでもセックスやゲイに対しておおらかなのは、マイペンライ(気にしない)の精神からだろうか? 貧困と贅沢、喧騒と静寂、猥雑と清廉、怠惰と奉仕……。相反するモノ同士が渾然と混ざり合っているのが、タイの顔。しかも、その顔はいつも穏やかに微笑んでいるのだ。だからタイは面白い。 |
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