カナダ旅日記

北イタリア・シェナでノルディック・ウォーキング


 4月下旬に訪れたイタリアの北部、南チロル地方にあるシェナはリンゴの花が満開だった。ミュンヘンからバスで約300km南下し、いつの間にかオーストリアを通り抜け、シェナに到着。村の駐車場には、これから宿泊するB&B「ハウス・ヘルガ」のご主人が迎えに来ていた。

 2階の部屋で荷物をほどき、各部屋についている小さなバルコニーに出るとアルプスの山々がすぐ目の前に迫り、眼下には白い可憐な花いっぱいのリンゴ果樹園が広がる。夕方になると、空気が澄んでいるせいか、リンゴの花の香りがより濃厚になり、部屋中に漂った。

 シェナは人口2700人の小さな村。オーストリアの国境に近く、公用語はイタリア語とドイツ語だが、かつてオーストリア領だったため、住民のほとんどはドイツ語が母語である。年間の晴天日が300日という温暖な風土に恵まれたうえ、全長224kmに及ぶトレイルが広がるハイキングのメッカとして有名な観光地で、年100万人以上が訪れるという。

 村にはプール、スパ、ジムが整った4つ星ホテルから、民家のB&B、家具付きアパートまで、ニーズに応じた宿泊施設がたくさんある。私たちが利用したB&Bのゲストハウスは、シーズンオフでひとり一泊朝食つき20ユーロ(32カナダドル)。部屋はシンプルだが清潔だし、おいしいパンとコーヒー、そして気配りの細かい女主人ヘルガのもてなしぶりで、気持ちよく1週間を過ごすことができた。

        

ノルディック・ウォーキングに挑戦!

 さて、今回の旅の目的は「歩いて歩いて歩きまくる」ことだったので、月曜日の朝9時から始まるノルディック・ウォーキング初心者コース(2時間で3ユーロ)に参加。シェナに向かう前に、ミュンヘンのスポーツ店で購入した伸縮性ハイキングポールを持参し、意気揚々とインストラクターの到着を待つ。参加者は中年の夫婦が多く約12名。やはり全員が同じようなハイキングポールを手にしている。  インストラクターがスキーバッグのような大きな袋を持って登場し、我々のポールを一瞥し、指差しながら「これも、あれも、ぜーんぶ、ノルディックには役立たずだよ」とのたまうではないか。

 クロスカントリースキーに似ているポールだが、ノルディック・ウォーキングを本格的にするなら、一般のハイキングスティックでは都合が悪いという。カーボン製のしなやかなポールは、軽くて弾力がある。本格的なポールを選ぶなら、伸縮しない「1本竿」を。伸縮できるポールは持ち運びに便利だが、地面に触れるたび余分な振動が手に伝わるので好ましくないとのこと。さらにグリップのストラップが輪っかではなく、マジックテープで親指の付け根から手のひらの半分をしっかり固定できるストラップがベストだそう。(図を参照)

 そういうわけで、参加者全員がインストラクターの大きな袋に入っていた「正しいポール」を借りることになった。

 ノルディック・ウォーキングは2本のポールを使うのが大原則。ポールの長さは腕を直角に曲げたときの手の位置がグリップになる高さだ。腕は前後に大きく振るのではなく、むしろ肩の動きで腕が自然に動くという感じ。腕が前に来てポールが土に着地するときにグリップを握り、腕が後ろへ行ったときに手のひらを広げる。握る、離す、握る、離すを繰り返すことで、血液の循環を亢進する。ストラップで手首を固定するのが肝心な理由がここにある。

 村の広場の中を行ったり来たりして、まずは平面を歩く練習。ポールの先はゴムのカバーで覆われているので、アスファルトでも振動がほとんどないし、音も静かだ。それからいよいよ1列になって、ハイキングトレイルへと向かった。土の上を歩く前に、ポールの先についていたピックのカバーゴムをはずす。 リズムをつけて歩くと、ポールが身体を支えてくれるのでこぼこ道も気にならず、かなりのスピードで進むことができる。姿勢をまっすぐに伸ばし、登り坂でも前かがみにならないこと。下り坂も、やはりポールを使っているため、膝や足首の関節に負担がかからず、すいすい歩ける。

歩きやすいので、勢いがついてスピードが上がるのだろう。実際、普通の徒歩で1時間280Calのところ、ノルディックウォーキングだと400Calになり、カロリー消費が46%も増加する。全身運動は血液の循環を良くして、筋肉のこりと痛みも和らげる効果もある。

もともとはクロスカントリースキーの夏場トレーニングとして開発されたノルディック・ウォーキングだが、その発祥地フィンランドでは現在76万人が、ヨーロッパ全体でも350万人がノルディックフィットネスを実践している。

花もダンゴも楽しめて・・・

 2日後に中級テクニックを習おうと3時間5ユーロのノルディック・コースを取った。この日の参加者は20人余り。2グループに分かれ、最新テクの心拍モニターを各自が身に付けて出発!

 満開の花が咲くリンゴ果樹園を通り抜けたり、坂道を登ったり下ったり。習った基礎を思い出しながら歩を進める。ときどき、ポール2本を同時に突いて急な坂を上ってみた。身体が安定するので楽に歩ける。 途中休憩のゲストハウスで飲んだリンゴジュースが最高においしかった。日差しが強いので、帽子とサングラス、水ボトルを入れたバックパックは必需品だ。

 シェナのハイキング・トレイルは、途中にベンチがいくつもあるし、最寄のゲストハウスやレストランまで「歩いて何時間」という標識が立っているので、目安になる。面白いのは、kmの距離ではなく「4分の1時間」とか「2分の1時間」という表示。私たちは結構早足だったので、たいてい表示の半分の時間で目的地に到着した。

 ほとんどのシャレータイプのロッジでは、アルプスの山々を望むオープンデッキで食事を楽しめる。ちょうど白アスパラガスの出盛りだったので、サラダやパスタはアスパラガス尽くしで、私は大満足。オーストリアやドイツ風やイタリアンなど、バラエティーに富んだ食事ができたのも、うれしい驚きだった。

ハイキングを楽しむポイント

 シェナには4つのケーブルカーと2つのチェアーリフトがある。7日間有効のシェナ・カード(大人47ユーロ、6〜14才28ユーロ)を使うと便利。バス、リフト、博物館などが無料になる。

 私たちの毎日の「歩け歩けスケジュール」は、しっかり腹ごしらえした朝食後、とりあえずケーブルカーやリフトで、山の高いところまで行き、そこから段々と下山していくコース。下りのほうが登りよりは易しいが、それでも汗をかき、結構な体力消耗である。もちろんノルディック・ウォーキングのポールを使ってのハイキングだ。

 途中の景色を楽しみながら、立ち止まって写真を撮ったり、通りかかったロッジで軽食を取って、身体を休めることも大切。歩くことが苦痛になってしまったら、ハイキングの本来の醍醐味が味わえなくなる。パートナーのペースにも気を使って、あまりマイペースで歩かないこと。

 シェナはカトリック教の信心深い村で、村の中心には大きな教会があり、道端ではあちこちに小さな祠(ほこら)を見かけた。ロッジやレストランの部屋は、十字架やキリスト像がインテリアになっているほど。

 たとえ知らない人でも、道を行き交うときにに「グリュース・ゴット(ドイツ語で『神にあいさつを!』という意味)」と挨拶するのが習慣だ。穏やかな平和な村の横顔である。

 その後、ビクトリアへ戻ってからも、せっかく覚えたノルディック・ウォーキングを続けようと、毎日の3匹の散歩を兼ねて、マウント・ダグラスのトレイルをウォーキング・スティックを使って歩いている。  ワンコたちは、私たちに遅れを取らず元気に走る。おかげで、ワンコも我々もだんだん筋肉質になってきたようである。

参考サイト:
シェナ観光局 www.schenna.com
ノルディック・ウォーキング www.nordicwalking.com

初出:「日加タイムス」 2005年8月26日号



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