
ビクトリアを出発してバンクーバーで乗り継ぎ、トロント経由でチューリッヒに着いたのは、家を出て約20時間後だった。オンタリオ州に住んでいた頃は、ヨーロッパがもっと近かったのだが、西海岸からは時間がかかる。 翌日の昼ごろ、チューリッヒ駅から電車でフランクフルトへ向かう。いつのまにか国境を越えてドイツ入りしていた。乗務員がパスポートを検閲に来るが、スタンプを押すわけではなく、あっけないほどだ。約4時間かけてフランクフルトに到着した。
ライン川の支流であるマイン川を挟んで北側はビジネス街の高層オフィスが林立し、南側は古い建物の雰囲気を生かした美術館や博物館が並んでいる。 人口65万人の「ドイツの空の玄関」とも呼ばれるこの都市には、欧州中央銀行を筆頭に400を越す銀行があり、金融と商業の町だ。年間を通して多くの国際会議や見本市が開催されるコンフェランス・センターもある。 旧市街とショッピングの中心、ハウプトヴァッヘまでは宿泊ホテルから歩ける距離だったので、滞在中よく訪れた。歩行者天国になった道の両側は、デパートやしゃれたブティックが続き、多くの人で賑わっていた。ちょうど土曜日に市が立ち、新鮮な野菜や果物、クリスマス向けのリース、豊富な種類のチーズやソーセージ類があちこちの出店で売られていた。ほかほかに茹で上がったご当地名物、フランクフルトソーセージのホットドッグを頬張る人も大勢いた。
2時間半の観光バス・ツアーを駅のツーリスト・インフォメーションで見つけたので、さっそく参加してみた。料金は大人25ユーロ、子供10ユーロ(1ユーロ=C$1.56)。バスの座席上にヘッドフォーンをつなぎ、録音テープを聞くようになっている。英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、スペイン語、日本語、中国語、アラビア語の8ヶ国語から選べるのが便利。ところどころガイドの生中継も入り、これは英語とドイツ語で話してくれた。 レーマーは、歴史的建物が集まる広場で、3つの切り妻屋根の旧市庁舎は15世紀の初めに建てられた。皇帝の大聖堂と呼ばれる広間では、過去10人のドイツ皇帝の戴冠式が行われたそうだ。広場の奥まったところには、古代ローマの遺跡があり、風呂場らしい形が残されていた。 旧オペラ座や前述したハウプトヴァッヘの中でも高級ブランドショップが軒を連ねるゲーテ通り、レストランやバーの並ぶ下町のザクセンハウゼンなどをバスで周り、高層ビル「マインタワー」から地上200mの展望を楽しんだ。
ドイツが誇る偉大な詩人ゲーテは、1749年8月28日、この家で生まれ育った。戦災に遭い、家屋は戦後再建されたが、家具調度品はオリジナル。4階建ての家は天井が高く、いかにもドイツの質実剛健さを思わせる重厚な造りだ。各部屋に配置されたアンティークの家具は、繊細な象眼細工を施したものもあり、芸術品として見ごたえがある。 別棟になっているミュージアムでは、数多くの絵画やゲーテをモデルにした彫刻、彼の直筆の原稿などが興味深い。毎日開館しており、入場料5ユーロ。 フランクフルトの人口のうち、30%は移民が占めているだけに、雑貨屋の主人がドイツ語を流暢に話す中国系だったり、アラブ系の移民をよく見かけたり、国際都市の様相たっぷりだ。 カナダは嫌煙国家として、建物の中ではすっかり禁煙が定着しているが、ドイツはどこもかしこも喫煙天国なので、少々閉口した。レストランの過半数のテーブルから紫煙が立ち昇り、せっかくの食事の香りがタバコの匂いでかき消されて味も半減するような気分。それでも、グーラッシュ(パプリカ風味のビーフシチュー)やローテ・グラッツェ(レッドカレントのフルーツで作ったジェロ風デザート)など、地元料理は、しっかりと賞味してきた。 大好物のマジパン(アーモンドペースト)入りチョコレートも、あれこれ買いあさった。でも、どうしても好きになれなかったのが、フランクフルト名物のアップルワイン。アルコール度が5%で、未成熟のアップル・ビネガーのような酸っぱさだ。アルカリ性飲料で、身体には良いそうだが・・・。 地下鉄や路面電車の交通網が発達している上、フランクフルトカード(1日、2日券)を買えば、公共交通は乗り放題。おまけに市内観光バス25%割引きや博物館、美術館の入場料が半額になるという特典つき。カードを上手に使えば、効率よくひとりで観光できる。 ドイツでは売春は合法化されているので、観光用のパンフレットを見ていると、コールガールやエスコート会社の広告がずらりと載っているので驚いた。夜道を歩いていて、間違って裏通りに入ったら、あやしげなセックスショップが並んでいたというハプニングも。 今回のボーナスは、帰りのフランクフルトからトロント行きのエア・カナダ便は、B747(ジャンボジェット)が最終フライトだったこと。 でも、この飛行機は完全にリタイアーするわけでなく、今後はカーゴ用として使われるという。パイロットやフライトアテンダントが、最後のセンチメンタルジャーニーを遂行し、飛行機がトロントに着陸すると、乗客からスタッフをねぎらう大きな拍手がわきおこった。記念すべきフライトに乗れて幸運だった。
初出:「日加タイムス」 旅の話題 2005年3月4日号 |
ホーム‖戻る
Copyright (C) 2001-2005 Yumi Schemmer. All rights reserved.
This site best viewed using 800 x 600 screen resolution and True Colour display.