カナダ旅日記

トーテムポールの町「ダンカン」


 ブリティッシュ・コロンビア州の州都ビクトリアからトランスカナダ・ハイウェイを北へ40分ほど走ると、人口4500人のダンカン市がある。

美しいカウチン川と穏やかなカウチン湾を望むダンカンは「トーテムポールの町」として知られている。 スコットランド移民から編み方を習ったファーストネーション(先住民)がMountain Goat(シロイワヤギ)の毛糸で編んだカウチンセーターの誕生地でもある。(現在は羊毛で編むのが普通)

            

41のトーテムポール

 町のあちこちに立っているトーテムポールを見つけるのは極めて簡単。歩道に描かれている黄色い足跡をたどっていけばよいのだ。「オズの魔法使い」ではないけれど、"Follow the yellow footprints"すれば、ガイドいらずというわけ。

 1985年から市を挙げての先住民支援とトーテムポール文化保護の運動が始まり、ダンカンをトーテムポールの観光地として有名にした。

 現在、その数は41本にのぼる。それぞれのトーテムポールには、モチーフとなっている動物の説明とアーティスト名、製作年が表示されている。

 昔から使われている熊、鮭、シャチ、ワシ、カラス、狼といったモチーフだけでなく、近年、車椅子でカナダ大陸横断を成し遂げたリック・ハンセンの像など、モダンなデザインのトーテムポールもある。

 また、ダンカンの姉妹都市、ニュージーランドの「カイコヘ」から寄贈されたマオリ先住民のトーテムポールの何本かがダウンタウンの一角に展示されており、両方を比較すると面白い。

            

ネイティブ・ビレッジ

 カウチン川の岸辺に「ネイティブ・ビレッジ」と称する展示パビリオンがある。

 ネイティブ・アートのギャラリーやEXPO86で展示された建造物、あちこちにトーテムポールが立ち並び、小さな村のように作られた観光スポットだ。

 カウチン先住民の歴史やダンカン地方の美しい自然を紹介する映画が30分おきに上映され、楽しめる。先住民職人によるトーテムポールや工芸製作のデモンストレーションもある。特徴あるデザインの工芸品が、ギャラリーで購入できるのもうれしい。

 さらにランチ時には「サーモン・バーベキュー・ショー」で、先住民式のランチを試してみるのもよい。

              

ダンカン博物館

 ダンカン駅だった建物が、今は博物館となっている。1880年代、イギリスやスコットランドからの移住者が、バンクーバー島へやって来て、カウチン峡谷を開拓した。

 当時、農地だった土地に鉄道が敷設されるにあたり、その農地所有者ダンカン氏の名前を受け継いで「ダンカン市」が誕生した。1912年のことである。

 博物館には、当時の雑貨店を再現した展示があり、なかなか興味深い。1917年物のキャッシュ・レジスター、1910年の紅茶缶や年代物の食品が棚にずらりと並んでいる。

 これらのアンティークは、ほどんどがダンカン市民からの寄付だという。

 開拓者と共に海を渡って新天地へやって来た、磨きぬかれた家具や調度品の数々。当時のヨーロッパ風の生活ぶりがしのばれる。

 ひとつ、びっくりした展示物は、髪の毛で作った造花の壁飾り。金髪、栗毛、茶色などの髪をそれぞれ色別に編み込んで、立体的な造花を作り上げてある。葉っぱや茎もすべて髪の毛でできている。いったい誰が、どうやって作ったのだろうか。気の遠くなるような作業だったに違いない。

 そのほか、手動のバター製造機や木製の冷蔵庫など、興味を引かれる物がたくさんあった。

            

先住民指定保護地区

 カウチン川を挟んで、かなりの広範囲が先住民指定保護地区となっている。

 ダンカンにある比較的新しいショッピングモールは、保護地区にあるので、店のテナント料は先住民が管理している。

 また、先住民はIDカードを提示すれば、消費税が免除という特典がある。さらに、保護地区内での所得に関しては税金免除。これらは、過去の歴史を認めた上で先住民を尊重しているカナダ政府の姿勢である。

 しかし、町をドライブしていると、突然、手入れされていない庭や荒れた家々が目に入り、それらが先住民の住居であるという事実は、どうしたものだろうか。

 高い失業率、アルコール依存症など先住民が抱える問題は、カナダ全体の社会問題になっている。 旅の収穫は観光だけでなく、あまり普段目にしたことのない物を見て、ちょっと立ち止まって考えることにもあるようだ。

初出「日加タイムス」カナダ観光シリーズ 1998年7月10日号



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