
ビクトリアには、海を眺めるビーチ沿いに大きな墓地がある。車の乗り入れは禁止で、静かな遊歩道の両側には緑豊かな木々が生い茂り、墓を取り囲む芝生は手入れが行き届き、まるで映画のひとコマになりそう。市役所が芝刈りなどを管理する広さ約3万4千坪の土地に、ビクトリアゆかりの著名人や歴史上重要人物の墓が並んでいる。 毎週日曜日の午後2時から、地元の「墓地愛好家協会」の人たちがボランティアのガイドとなって、それぞれ永眠する人々の歴史を紐解いたり、墓石のデザインを鑑賞したりする「お墓めぐり」に人気がある。 確かにカナダの墓は、ユニークな形のものが多く、等身大の天使が大きく羽根を広げていたり、大理石に見事な肖像と花が彫刻されていたり、故人の好きだった歌の一節が墓石に刻まれていたりで、ちょっとした芸術作品を眺めている気分になる。 また、この土地の一角には、明治時代に日本から海を渡って来たカナダ移民のパイオニアたちが眠る日系人墓地もある。実は1909年の台風で、墓地の最南端にあった日系人の墓石のほとんどが波にさらわれたため、戦後移住者や日系三世が協力して、1999年に152人の墓石を新たに作り、立派な合同石碑も建立した。毎年夏には、日系人ボランティアの手により、墓を清掃し花を供え、バンクーバーから僧侶を招いて、本格的なお盆の行事が執り行われる。そして、僧侶の読経の中で、ひとりひとり石碑に向かって焼香するお盆を実地体験するツアーも、墓地歩きの年間スケジュールに組み込まれているのである。
最も人気があるのは、ハロウィーンの季節が近づくと行われる「幽霊散歩」だろう。日本でもお墓歩きは「肝試し」の絶好の場所であるように、カナダでも怪談にはお墓がつきものだ。10月31日のハロウィーンの夜には、「墓地歩きツアー」が、15分おきに出発するという忙しいスケジュール。なかには、ガイコツや魔女やドラキュラなど、おどろおどろしい扮装で参加する人もいて、演出効果はたっぷりだ。1年を通して、興味深い行事と共に行われるこのツアー、生きている者だけでなく、墓に眠る霊たちも楽しませているに違いない。
(2005年10月25日) |
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