
シーク教の歴史は浅い。約500年前、ヒンズー教徒の家庭に生まれたグル・ナナクがインドのパンジャブ地方で広めたのが始まりだ。当時のインド北部で、ヒンズー教とイスラム教が敵対していたことに心を痛め、グル・ナナクが祈りと瞑想によって唯一神を崇拝するよう説き、カースト制を否定し、すべての人々は平等であるべきと強調し、礼拝の後に人々が一緒に座って同じ食べ物を分けあうことを奨めた。彼はイスラム教にも反対して、早くから男女平等を唱え、女性の礼拝参加や活発な宗教活動を大いに奨励した。 現在シーク教徒は世界に1500万人いる。イスラム教徒が約10億人、仏教徒が5億人と言われているので、シーク教徒は少数派の宗教だ。 それなのに、ターバンや長いひげといった独特の外見で目立つ集団のため、おそらく世界中でもっとも誤解されている宗教のひとつだろう。 その誤解が殺人にまで及んだ事件がある。2001年9月11日の同時多発テロ直後に、アメリカの小さな町でシーク教徒の経営するガソリンスタンドが襲われ、彼は無残にも射殺された。明らかにイスラム教徒を狙った報復行為だったが、間違われたシーク教徒男性の理不尽な殺され方は、あまりにも悲劇だ。 いや、もし彼がイスラム教徒だったとしても、テロ事件と何のつながりがあるというのだ。今回のテロリストはイスラム教徒の中でも最異端の過激分子であって、彼らと平和を願う穏やかな一般イスラム教徒とを一緒にすべきではない。
礼拝堂には椅子がなく、あぐらをかいて座る。正面に立派な天蓋つきの壇があり、キングサイズのマットレス風台座の上に鎮座するものこそ「グル・グラント・サヒブ(聖典)」である。 10番目のグル・ゴビンド・シンが亡くなる時「これからは人間のグルを後継者とせず、聖典をスピリチュアルなグルとするように」と言い残した。 それ以来、グルは5894の賛歌から成る1430ページの聖典となったわけだ。全部読む(斉唱)のに48時間かかるという。
礼拝の後にはカラ・パサードという聖餐が全員に配られる。セモリナ(小麦粉)、バター、砂糖で作ったマッシュ状のもので、両手を皿のようにして受け取り、絶対に食べ残してはいけない。 その後、地下の食堂(ここもテーブルや椅子はない)でランガー(食事)が提供される。どんな宗派の人でも食べられるよう、料理はベジタリアンだ。
■シーク教徒の人は5つのKを身につけている。 ターバンはシーク教徒のシンボルのように思われているが、彼らにとって大切なのは髪を切らないという行為だ。長い髪をまとめるために、二次的にターバンが必要だというわけ。女性の場合も巻き方こそ違うがターバンをするか、長く三つ網に編んで背中にたらしている。子供は長い髪をおだんごにし、パッカというドアノブカバーのような布で包んでいて可愛い。 しかし、若い人たちの中には、髪を短くカットしていたり、ひげも伸ばさない人が多い。上記の5Kは「カルサ」という洗礼を受けた者が守らなければならない掟だが、シーク教徒すべてが「カルサ」を受けているわけではないからだ。 ガードワラで取材をした時、ある男性が「私はターバンはしないし、髭も剃っているが、シーク教徒の誇りはある。私の神に対する気持ちを外見だけのジェスチャーで他人に証明する必要はないし、宣伝するつもりもないから」と言ったのが印象的だった。 理不尽な差別や誤解を招きやすいシーク教徒にとって、彼のような「隠れシーク」は、自己防衛のためにも、これからの若い世代に多くなるかもしれない。 願わくば、人々の無知からくるシーク教徒への偏見が、今後少しでもなくなれば良いのだが・・・。
2002年7月1日 |
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