
実は2年前に購入した家もガレージがなかった。いや、正確に言うと、過去には間違いなくガレージがあったはずである。公道から家まで、ちょうど1台分の車寄せの坂道があり、その向こうにある家の壁は、他の部分の壁に比べると少々新しく、ペンキの仕上がりも微妙に違う。そして漆喰(しっくい)の壁には2枚の比較的新しい窓がある。 元ガレージは、現在は広い寝室になっていて、ちょうど家の半地下室にあたる。玄関も別にあり、バスルームと小さなダイニングキッチンまで完備した2世帯式の住居だったのだ。
これは貸せる!と夫と私はすぐに地元の新聞に「大学に近く、便利なバス路線にあるアパート貸します」と広告を出した。新聞広告が功を奏し、かなりの人数が家を見に来たが、子どものいる家族には貸したくなかったので、政府の奨学金でカレッジに通う18歳の青年に貸すことになった。
ある日、娘から興奮して電話があり、階下でピストルを撃つような音がするので、下へ行ってみたら、この青年が廊下の壁やソファ、クッションや窓のブラインドにまで、パレットガン(散弾銃)で、射撃練習をしていたと言う。あわてて現場に駆けつけ、銃と未使用の小弾丸を押収した。廊下の壁には点々とパレット(散弾)の跡がつき、クッションやブラインドも穴だらけ。人を殺傷するほどの威力はないパレットガンだが、家の中で射撃練習とは、いったい何ごとと、すぐに引っ越してもらうことになった。
最初にもらった500ドルの敷金は、修理代にするため、もちろん返さなかった。しかしである。彼の引っ越した後の部屋の汚れ放題の有り様には、頭をかかえた。台所の流しは汚れた食器がそのままだったし、カーペットは染みだらけ。レンジはこげこげのドロドロ。そして、クロゼットの中には、ごみ回収日に出さなかったごみ袋が山のように隠してあったのだ。
安易に考えていた家賃収入の道は、そんなに甘いものではなかった。その後私たちは家の中のキッチンキャビネットや電化製品を新しくし、もう賃貸用の住居はこりごりと売ってしまった。次の新しい家のオーナーは、さっそく母屋と下の階の2世帯両方を貸しているようだ。良いテナントを見つけたのだろうか。人ごとながら、ちょっと心配である。
初出:朝日新聞 住まいコラム「世界のウチ」2007年3月17日 |
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