
ある友人の母上は、ご主人を亡くした後、新築のシニアホームへ入居した。88室の各部屋には冷蔵庫と電子レンジを備えたミニキッチンがあり、週1回の掃除とリネン類の取り替えサービスはホームが提供。1日3食付き、3回のお茶の時間もある。料理を手がけるシェフはスイスの有名レストラン出身なのだとか。ぜひ昼食にいらっしゃい、と誘われて、ホームを訪れた。
噴水のある中庭を通ってドアを開けると、豪華な絨毯が敷きつめられ、重厚なインテリアのロビーは、まるでホテルの趣。迎えてくれた母君は86歳になるインテリおばあちゃまだ。
ダイニングルームに続々と住人が集まってきた。髪をきちんとセットし、思いっきりおしゃれしたご婦人方。歩行器を使う人もいるが、パールやゴールドのアクセサリーを身につけ、口紅をさしている。男性はワイシャツにネクタイ、ジャケット姿の人もいて、おしゃれな雰囲気があふれている。
ランチでここまで正装するのだから、ディナーのときは推して知るべし。毎日たっぷり時間があるから、おしゃれもできるのだろうが、老いてこそ気合を入れて美しく装う精神は、お見事。
ランチといっても、スープからデザートまでのフルコースで、メニューも選べる。量はシニア向けに少なめで、健康的なあっさり味だが、スイスシェフの腕前に納得した。
ダイニングルーム、ラウンジ、映画シアター、美容室、温室、図書館、会議室まで完備したホームのお家賃は、月19万_36万円。ピンからキリまで数あるシニアホームの中でもかなり高級だが、いくつになっても素敵な暮らしを求める人たちで、入居は長い順番待ちなのだそうだ。
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初出:「婦人公論」海外女性通信 2006年9月7日号
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