カナダのニュース

ラブ・ボート物語

 バンクーバーとビクトリア間のフェリーボートは、一日14本(冬は8本)運航している。正味1時間半の船の旅は、驚くほど揺れの少ない静かな乗り心地だ。

 デッキからの景色を楽しんだり、船内のカフェテリアで食事をしたり、ギフトショップをのぞいたり、子どものための滑り台やゲームコーナー、すわり心地のよいマッサージ椅子もあり、簡素ではあるが、ちょっとしたクルーズ気分が味わえる。

 運良くイルカやシャチの群れがフェリーから見えるときもあり、チャンスを逃すまいと、フェリーボートのキャプテンが、サービス精神よろしく船内アナウンスしてくれる。すると、とたんに船内はにぎやかに活気立つ。見知らぬ乗客同士の会話が始まるのも、こんなきっかけからだ。

 道端で知らない異性からナレナレしく声をかけられたら、たいていの人は「ナンパね……」と警戒心を持つだろう。しかし、フェリーボートの場合、どうも様子が違ってくるようだ。同じ船に乗っていることから、何か不思議な仲間意識のような安心感をお互いに持つのだろうか。言葉をかわした瞬間からドラマが始まり、そして熱い恋の思いへ……まるで小説もどきのフェリーを舞台にした物話をいくつも聞いている。

 知り合いのペンキ屋さんは、バツイチの40代で、ティーンエージャーの娘がふたりいる。彼はバンクーバーへ行くフェリーの中で、旅行中のイギリス人女性に話しかけたことから恋が芽生え、遠距離恋愛を経て、とうとう彼女はカナダへ移住してしまった。

 もう一人は、やはり離婚経験のある中年男性で、オンタリオ州に住んでいたが、フェリーで知り合ったビクトリア在住の女性のもとへ、近々引っ越してくると言う。オンタリオ州で安定した仕事に就いていたにもかかわらず、将来の仕事や生活の目安も立たないままに、いきなり転居するのである。恋の力は偉大だ。

 昔、アメリカの連続テレビ番組で「ラブ・ボート」という、クルーズ船内で繰り広げられるロマンス物語があったけれど、どうやら実際にも起こっているらしい。

 恋でなくとも、ナンパの格好の場であるのもフェリーボートだ。週末にフェリーで何度も行ったり来たりして一日を過ごし、船内で見かける一人旅の若い女性だけをターゲットにする不届き者もいる。地理に不案内な女性を捕まえて「観光案内しましょう」と巧みに近寄って、かなりの高い成功率でナンバできるそうだ。

 カナダ旅行にいらっしゃる日本の若い女性の皆さんも、恋に発展する出会いならよいけれど、ナンパされないよう、くれぐれもご注意くださいね。


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