
シンプルなインテリアを「Zenスタイル」と言い、スパのアロマセラピーは「Zenトリートメント」。生垣に飛び石、石灯籠のある庭は「Zenガーデン」と呼ばれるほど。和食レストランのメニューにまで「Zenスシ」が登場するありさまだ。なかには流行と名前だけの「Zen」に終わらず、仏教に傾倒し、座禅を組む、真の禅修行者もいる。ビクトリアと周辺のバンクーバー島内だけで、じつに約25もの禅センターがあるのだ。
そのひとつである「心山寺」は、カナダ人の尼さんが指導する禅堂。閑静な住宅地にあるウエスト・コースト風の家の地下室が、畳を敷いた禅堂になっている。週1回、座禅の会があるというので参加してみた。僧伽(そうぎゃ=参加者)は90%が白人だ。
ローマ字で書いた般若心経を全員で誦経(ずきょう)する。常連である日本語ペラペラの金髪男性は、本格的な結跏趺坐で座禅を組むので、びっくり。座禅は20分続き、次は経行(きんひん)の修行。上の階へ行き、全員が一列に並んで廊下からリビングルームを通ってダイニングルーム、キッチンをどうどう巡りで歩き回る。もちろん瞑想をしながら、である。
それから再び地下の禅堂へ戻り、20分間の座禅。この間、尼さんが警策(けいさく)を持って座禅する者のまわりを歩くが、実際に叩かれることはない。座禅を終えたら、ひれ伏し、両手のひらを耳の横で上にかざしてから立ち上がり、というチベットの五体投地のような動作を3回繰り返す。
座禅は空(くう)の境地になるように、と指導する彼女だが、何ごとに対しても「自我」の強いカナダ人が、「無我」をめざして座禅を組み、キリスト教や他の宗教では得られない癒しを求め、仏教や禅の道へ精進する姿は、日本人の目から見ても、新鮮で清々しいものだった。
初出:「婦人公論」海外女性通信 2005年10月7日号 |
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