
- 子育てアイテムで見えてくるカナダの素顔 -
カナダでは、ファミリードクターの役割がたいへん大きい。ここでは、医療システムは完全な医薬分業。医者がその場で薬をくれる日本とは違い、まずは処方箋を医者に書いてもらい、薬局へ走る。わが家の病歴や治療歴に詳しいファミリードクターはとても頼りになる。
子どもの予防接種や定期健診は、各家庭が責任を持って受けさせなければならず、日本のように学校が生徒全員の面倒を見るなど、ありえない話なのだ。
信頼できるファミリードクターに家族の健康状況を把握してもらい、長くお付き合いしていくことは、育児の支えになり、そしていざという時のライフラインとして重要である。
わが家の場合、トロント生まれの娘と息子は、赤ん坊時代から十代の初めまで、同じファミリードクターに通い続けた。子どもたちが幼かったころは、遠く日本を離れたカナダで知り合いもないままに、不安な育児に奮闘中だったので、ファミリードクターに子どもの成長を見守ってもらったという感さえある。
子どもが学校へ通いだすと、勉強よりもスポーツに参加させるのに親はやっきになる。カナダに「教育ママ」という言葉は存在しないが、「ホッケーママ」や「ホッケーパパ」はいる。まだリンクの上をヨチヨチ歩きしかできないような五、六才の子どもが本格的なホッケーのヘルメットや防具を着けてレッスンを受け、観戦席から興奮しながら大声で叱咤激励する親たち。
スポーツレッスンをはしごする子どもたちも珍しくない。朝、学校が始まる前に水泳クラブで泳ぎ、放課後はラグビーやサッカーの練習とか、バレエ、ジャズダンス、器械体操を習っているとか、1週間のスケジュールはびっしり詰まっている。
ご多分に漏れず、うちの子どもたちにもいろいろなスポーツをやらせてみた。水泳、バレエ、スケート、スキー、乗馬、空手、ボート・・・。競技会に出場して、メダルを取るほどまでには秀でなかったが、さまざまなスポーツをかじって一応マスターしたし、友だちも多くできたのだから、よしとすべきだろう。
昼間は学校やスポーツの習い事で子ども中心の家庭でも、夜はおとなの時間となる。ベビーシッターを家に呼び、夫婦はふたりでレストランでの食事や観劇など、ロマンチックな時を楽しむべく外出する。
カナダでは、十二才以下の子どもを留守番させるのは法律違反で、親が処罰される。たとえ15分であろうとも、ベビーシッターが絶対に必要なのである。私は新聞広告を出して韓国系の年配の女性を見つけ、ふたりの子どもは延べ15年ぐらいお世話になった。
しかし、たいていのベビーシッターは、ティーンエージャーが多い。というのは、高校生になると選択科目でベビーシッターコースを取り、救急処置やオムツの交換などを習った後は、さっそくベビーシッターのアルバイトで、こづかい稼ぎができるからだ。
夫婦の時間を大切にする個人主義とベビーシッターの合理的なシステムがお互いにうまく機能しているからこそ成り立つのだろう。
初出:初出:「マガジン・アルク」2005年8月号 |
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