
今年で10年目を迎えた「子どもを職場へ連れて行こう」は、カナダ全土の公立学校で同じ日に一斉に実施される。子どもたちは親、親戚、あるいは知り合いの職場を見学し、簡単な仕事も与えられ、そのリポートを提出するという社会勉強の日である。これまでに150万人の生徒が貴重な1日を体験してきた。今年は11月3日、全国約7万5千の職場が、この一大イベントに協力した。
さて、具体的に子どもたちは、どんな一日を過ごすのだろう。さっそく取材に出かけてみた。
ビクトリアのダウンタウンに近い薬局スーパーでは、青いベストのユニフォームを着たカイル・テーラー君が、お母さんと一緒に働いていた。早番のお母さんの仕事のため、朝8時に出勤。お母さんの仕事は、入金を扱う事務が多いので、奥の部屋でコピーを取ったり、書類を整理するのが彼の役目。時々、気分転換も兼ねて棚の商品の整理など、店の中でも働いた。
「朝の出勤が早かったから、午後2時には家へ帰れるんだ。お母さんの仕事?クールだ(かっこいい)と思うよ」とカイル君。
お母さんがお客さんと部屋に入ると、アヤさんはさっそく学校から渡された何枚もの宿題レポートにとりかかった。スパで働くスタッフの人たちにインタビューしなくてはならないのだ。宿題には、インタビューの質問リストがぎっしりと書いてある。
この仕事に就くための資格、受けたトレーニングについて、資格を得るために通った学校について、どんな責任を任されているのか、今後の仕事の将来性やキャリアを伸ばす展望、そして仕事に伴うストレスについてなど、職場の人のナマの声を聞こうというものだ。
さらに宿題では、職場のスタッフから見たアヤさんの働きぶりをコメントするページまで用意してある。今日は学校に行かなくてもいい、楽な遠足のようなイベントかと想像していたが、とんでもない!なかなか気が抜けない厳しい職場体験のようだ。
「私は本当はジャーナリストになりたいの。だから、スパの仕事はあんまり興味ないんだけど・・・」というアヤさんだが、お母さんの監督の下で、床掃除や整理整頓も、きちんとやりこなした。
高校前の14歳という年齢では、大学進学はもちろんのこと、将来のキャリアまで計画するには、まだ早すぎるかもしれない。だが、職場での1日は、ふだん知らない親や親戚の働く姿を見ることができ、子どもたちは学校と家庭生活の舞台を離れて、言わばバックステージを見学するようなもの。社会の仕組みや経済の流通のようすをほんのわずかでも、体感することもできるだろう。
そして、職場体験が終わったら、しかるべき職場の上司あてに礼状を出すことも、子どもたちには義務づけられている。職場の快い協力なくしては、このカリキュラムは成り立たないからだ。きちんとした礼状が書けることは、社会に出るための大切なマナーのひとつとして学ばせるのも、心にくいカナダの教育方針である。
初出:「学びの場.com」 海外の学校から 2004年12月20日 |
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