
さあ出かけよう、と椅子の上を見ると財布がない。やーねー、また物忘れ?とあちこち探すが見つからず、ちょっといやな予感がしたので、家から離れたところにあるガレージへ行って、車のドアを開けると、あっ!カー・ステレオがごっそり抜かれている!しまった!財布も盗まれたんだ!
すぐに911に電話して警察を呼んだが、「ビクトリアはこういう犯罪が多くってねー。庭仕事の最中に、こそ泥にやられるなんてザラだよ」とポリス。玄関のドアは開いていて、スクリーンドアだけが閉まっていた。玄関横の窓から、ちょうど財布が見えたのも、まずかった。でも、家の中には4人、犬も3匹いたっていうのに。犬たちは一言も吠えず、もうー、役立たず!それにしても、何という大胆なこそ泥だろう!ずっと私たちの様子を外の茂みからうかがっていたのだろうか。あー、気持ち悪い。
それから夜中まで、クレジットカードの盗難届け、さらに市民権カードやSINカードなどすべてのIDの盗難届け、警察へのレポート提出など、時間と手間のかかる作業が続いた。SINカードは2つのIDを見せなければ再発行してくれない上に、警察からの報告書が必要と言われるし、パスポートと同じくらいの価値でヤミで売られるという市民権カードを無くしたのは、大ショック。
財布の中にわずかしか入っていなかった現金より、こうして再発行申請のための費用のほうが上まってしまう。数日間は運転免許のオフィスやイミグレーション・オフィスなどに足を運んで、カードの申請に大変だった。そうこうするうちに、警察署から電話があり、誰かがあなたの運転免許証を届けたから取りに来るように、とのこと。ほかのIDやジムのメンバーシップ、ブッチャートガーデンの年間パスは戻ってこないで、免許証だけが手元に帰ってきた。
また数日たって、今度はウェスト・ジェット・エアーラインから「○○さんの庭先にあなたの荷物が見つかりましたから、連絡を取るように」という電話があった。荷物って何?とよくわからずに電話をすると、近所の庭先にスキーバッグに入ったスノーブレード(ショートスキー)が落ちていて、ちょうど春休みのスキー旅行のウェスト・ジェットのタグと私の名札が付いていたために、身元がわかったという。
財布とカーステレオのことで頭がいっぱいで、ガレージからスキーが盗まれていたのに気がつかなかったのだ。だけど、どうして短くて軽いスノーブレードを持ち出してから、近所に捨てたのだろう?じゃまな荷物になったから?翌日、そのお宅へもう一度おじゃまして、庭の茂みを探させてもらった。もしや財布かIDが見つかるかもしれないと思って・・・・。
数週間後にビクトリアの新聞を読んでいたら、同じ通りにあるご近所で、こそ泥3人組が家の裏手にある物置を物色中、家のオーナーが彼らを見つけて脅かそうと銃を持ち出し、たまたまそれを目撃した隣人が警察に通報、こそ泥2人は逃走し、一人が逮捕されるという記事があった。
驚いたことに、新聞には銃の不法所持の現行犯で逮捕された家人が、警察に連行される写真がデカデカと載っていたのだ。こういうとき、一応「こそ泥」は捕まったものの、まだ有罪になっていないため、人権保護によって新聞には顔写真が載らず、銃の不法所持とはいえ、被害者である家人のほうが新聞記事になるとは、何という理不尽なこと!
私の住むロックランド近辺は、静かすぎる住宅地のうえ、街路樹が大きく茂り、庭の生垣も多く、こそ泥には大変都合が良いらしい。ビクトリア市警の統計でも、ロックランドの窃盗事件は過去2年間に倍増している。人口10万人あたりの窃盗事件はオンタリオ州が3,231件に対し、BC州は6,488件(2002年の統計)。警察の話では、麻薬中毒者やホームレスの人が現金欲しさのため、こそ泥をはたらくケースが多いと言う。
先日、ロックランド住民と市警が集まり、防犯のために「ブロック・ウオッチ」のシステムを導入しようと動き出した。近所のネットワークを密にして、お互いに目を光らせようというのだが、要するにポリス不足のビクトリアゆえ、警察は当てにならないと、市民が自覚し始めたということか・・・。
初出:「オーロラ」第46号 2004年晩秋号 |
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