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カナダで学んだ「褒める」子育て

 カナダの教育システムで感心するのは、学校がボランティアを奨励しているため、教師のアシスタント、ランチモニター、図書館の手伝い、休み時間の監督などで、父母が自由に学校に出入りできることである。

 私もふたりの子供が小学校の頃は、週一度の割合で教師のアシスタントを務めた。朝、授業が始まる前に生徒たちと一緒に大きな声でカナダの国歌「オーカナダ」を歌い、休み時間には皆でオヤツを食べたり、おしゃべりしたり。

 小さな学校だったので、通い続けていると校長や受付の秘書とも顔見知りになり、他のクラスの生徒からも「ハロー」と声をかけられるようになった。

         

ボランティア・ママの私にも「感謝してるわ」

 私の役目は、授業についていけない生徒をひとりずつ図書館や教室の片隅に呼んで、本を朗読させたり、単語を発音させたりすること。先生が選んだ本と生徒の名前が書かれたスケジュール表に従って、ひとり15分ほどの個人教授である。英語のネイティブでもない私が、英語圏で育つ子供たちに教えるなんて気が引けたが、先生から繰り返し

「あなたのヘルプには感謝してるわ。ありがとう」

と笑顔で言われると(こんな私でも役に立ってるのね)と嬉々としてボランティア・ママを続けた。それに、自分の子供が、『お母さんが先生の手伝いに来る日』を楽しみにしてくれているのも嬉しかった。

            

褒めて、褒めて、褒めまくる

 勉強の遅れている子が、他の生徒から嘲笑されることなく、少しも気後れせず学校生活を楽しんでいる。この明るさはいったい何?と不思議に思っていたら、ある日ナゾが解けた。

 生徒は個別のファイルを持っていて、その中には採点されたテストや作文、絵日記、クラフトなどが保管されている。どの子の作品も少々のスペリングの間違いは無視して、先生の絶賛コメントと可愛いシールがご褒美に貼ってあった。ファイルの表紙は、生徒がおのおの工夫したイラストやデコレーションで個性豊かに仕上がっていて、彼らの思い入れが想像できた。

 そうなんだ。褒めることこそが、何よりの魔法の力を持っている。この国では「すごいわね。よくやった。誇りに思うわ」という褒め言葉を「アイ・ラブ・ユー」と同じくらい頻繁に、大人も子供も実にタイミングよく言う。

 学期末に子供が鼻高々で持ち帰った、あのファイルの中身は、冷蔵庫のドアにペタペタと貼り付けられ、絵は額に入れられて、親はこう言うのだ。

「まあ、なんて良くできたんでしょう!あなたはホントに私にとって、最高の子よ!」

 小学校でボランティアしたおかげで、私は大事な子育てのテクニックを学んだ。褒めて、褒めて、褒めまくること。ちょっとくらいのマイナスは、目をつぶってあげよう。褒めることで、マイナスがいつしかプラスになっていくことを信じて。

 現在、わが子たちは19歳と17歳。むずかしいティーンエージャーの親業は、ますます複雑な問題と立ち向かわねばならず、ストレスはたまる一方だ。でも、子育てのラストスパートは、やっぱり褒めることを忘れずに、乗り切るつもりである。

初出:「別冊PHP」 2004年11月号


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