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浮世絵の宝庫「ステュワート・ジャクソン・ギャラリー」

 トロントのおしゃれな街、ヨークヴィルにはたくさんのブティックやギャラリーがある。その中で20年以上浮世絵専門のビジネスを続ける「ステュワート・ジャクソン・ギャラリー」をみなさんにご紹介しよう。
 入り口のドアを入ると、うなぎの寝床のように細長い部屋の通路に浮世絵がずらりとかかっている。どれもオフホワイトのマットと金色のフレームにおさまり、そのシンプルさがとても良い。西洋風のインテリアにもびっくりするほど調和している。
 オーナーのステュワート・ジャクソン氏は、米国出身で以前は美術館に勤めていた。浮世絵、特に広重の作品を熱愛し、その情熱がトロントでギャラリー業を始めるきっかけになった。今ではヨークヴィル界隈の古株のひとりだ。ジャクソン氏は現在600_700枚の浮世絵を扱っており、日本からの照会もあるそうだ。彼のコレクションの中には、「東海道五十三次」「名所江戸百景」「富嶽三十六景」など、私たちに馴染みの深い広重の浮世絵が多い。
 今でこそ浮世絵は日本を代表する美術のひとつだと認められているが、その芸術的価値を発見したのは、日本人ではなく西洋の人々だった。日本では、浮世絵は江戸時代の人気役者の似顔絵、あるいは風光明媚な名所の絵葉書程度として、半ば使い捨てにされていたが、フランス印象派のモネやゴッホに大きな影響を与えた。
 浮世絵のほとんどは海外に流出しているのが現実だ。例えば、歌麿の作品の3分の2以上が、また浮世絵全体でも明治時代に200万枚以上が海外に出てしまった。
 「ステュアート・ジャクソン・ギャラリー」では、こうして海外流出した浮世絵の数々にお目にかかることができる。200年近く経つ浮世絵でも、驚くほど保存が良く、みずみずしい藍や朱を放ちながらギャラリー内であでやかに息づいている。
 「まあ、あなたたち、遠い日本からどこをどう巡ってこのトロントにたどり着いたの?」と思わず浮世絵の一枚一枚に声をかけたくなるほど、一種の感動を覚える。
 ギャラリーに展示された浮世絵をじっくり見るだけでも目の保養になるが、ジャクソン氏に頼めば、値段がつけられないような彼秘蔵のコレクションも見せてくれる。
 2000年11月に開催された「アクセスジャパン」の期間中、ジャクソン氏のコレクションから春信、歌麿、国貞の女性像浮世絵30点をアート・ミュージアムで展示し、多くのカナダ人から好評を博した。
 かつて江戸時代の人々が浮世絵に親しんだように、もう一度私たちも浮世絵を身近に置いてみたらどうだろうか。

Stuart Jackson Gallery
119 Yorkville Ave., Toronto
www.jacksonarts.com

初出 オーロラ 14号(1996)


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