エッセイ

シニア・パワーに後ずさり…

 ビクトリにアは年寄りが多い。退職してカナダの東部から西部の極楽地、ビクトリアへ移住する人々が多いことと、気候が良いから自然に活動的になる上、元気なシニアたちは、健康作りに精出して、ますます長生きするので、高齢者の人口は増える一方だ。

 だから、ビクトリアは「Newly wed and nearly dead(新婚さんとお墓が近い人…近いとは思えない人が過半数だけど)」の土地だと言われている。確かに若いカップルや小さな子どものいるヤング・ファミリーは、なぜか数多い。

 しかし、私のような40_50代の層が極端に少ない。働き盛りの年齢層が少ないのは、ビクトリアには仕事がないからだろう。仕事がないと言い切るのは語弊があるが、市役所の資料を見ると、ビクトリア市内で『最も多く雇用者がいる機関ナンバー5』は、@B.C.州政府関係Aバンクーバー島の医療機関B国防省Cビクトリア大学D幼稚園から高校までの公立学校となっている。つまり、ビクトリアでは仕事に就いている人は公務員か、それ以外はレストランやギフトショップなどの観光業関係というわけだ。

 オジジとオババの比率は1:9で、どこの国でも女性は逞しく長生きすることを立証している。そして、長生きしているオジジは、両手に花どころではない。なんたって1:9だから、よりどりみどりの選択肢。おお、ラッキー!

 あるシニアホームでは、食事時にオジジが座っているダイニングルームのテーブルに何とかして一緒に座ろうと、オババ同士のさりげない無言の椅子取り競争があるらしい。スポーツジムでも、圧倒的にオババが多いので、オジジはもてる。だから、ジイさんは余計張り切って運動する…。

 しかし、中には元気なのは結構だけど、ちょっと度が過ぎるシニアもいる。例えば、私がいつも泳いでいる公共のスポーツセンターのプールには、「スケベジイ」が毎日出没する。髪もヒゲも真っ白で、おそらく70代だろう、このジイさんは、大きなゴーグルとスノーケルをつけて、何度も何度も往復して泳ぐ。しかも、泳いでいる女性の真後ろにピターっとついて、静かに泳ぐのだ。顔は絶対に水面上に出さず(スノーケルがあるからね)、ゴーグルで前方をしっかり見ている。

 どう観察したって、こりゃPeeping Tom(覗き魔)である。あんまり不愉快だったので、一度ライフガードに文句を言ったら、「彼は毎朝このプールに来るから、これからは注意して監視する」とスタッフは約束してくれた。

 だが、相変わらずスケベジイは、ゴーグルとスノーケルで武装して、悠々と泳いでいる。私は彼の姿を見ると、すぐにレーンを変える対策に出て、ジジイを避けるようにしている。しかし、他の女性は気がつかないのか、平気なのか、ジジイのすぐ前をのんびり泳いでいる場合が多い。どうしたものかネエ…。

 先日は若い女性が、たまたま私の横にいて、ちょうどこのジジイに「お先にどうぞ」なんて言われていたが、彼女は「いいえ、あなたがお先に」と答えて、私をホッとさせた。あとから、彼女には「あのスケベジイには、気をつけとき」と耳打ちしておいた。だって、すごく無邪気な若い女性だったから、私は心配で、心配で…。

 ところで、このジイさん、毎朝泳いでいるので、お腹は出てないし、余分な皮下脂肪ゼロ!ったく、ますます長生き、元気モリモリ、どうぞお達者で!

(2006年6月1日)



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