
夫とペットの犬2匹とカルガリー経由でビクトリア空港に着いたその日は、どしゃぶりだった。
ワンコたちにとって、初めての空の旅。出発前に与えた精神安定剤を本当に必要としたのは、私自身だったのかも。機上では、犬のことしか頭になかった。神経質なデイジー嬢は、きっと飛行機の騒音で気が狂いそうだろう、クッキーちゃんは鳴きどおしではないだろうか、精神安定剤をあげたことが災いして、もし揺れがひどくなったら、ケージの中でバランスを崩して怪我をするんじゃないか、などなど頭に浮かぶ状況は悪いことばかり。
乗客のスーツケースと一緒にベルトコンベアーの上に出てきた2つのケージを受け取るや、私はワンコ2匹をリードにつけ、空港の外へダッシュした。もちろん、おしっこをさせるためだ。トロントを朝6時に出て以来9時間が経っていたが、ケージの中で粗相したあとはなかった。用意してあったペットボトルの水をあげて、やっと一息つく。ワンコたちの無事が嬉しくて、どしゃぶりの雨なんて、全然気にならなかった。
さて、次はいよいよ荷物の番だ!と意気込んでいたら、翌日到着するはずのトラックが、ダンカン(バンクーバー島の町)での荷降ろしに手間取り(なにせ、大型トレーラートラックには、半分よそ様の引越し家具がすでに入っていたのだ)予定が遅れ、丸一日ぽっかりあいてしまった。きれい好きの夫は、これ幸いとばかりに「新居の掃除をするぞー」と宣言。
この家の前オーナーは、かなりのきれい好きで、最初に家を見たときは、カーペットに掃除機をかけたて!って感じの縦縞模様がどの部屋にもあり、玄関のタイルもピカピカに磨かれていた。
そして、カギをもらって新オーナーとして足を踏み入れたその家は、やっぱり縦縞が残っていて、まさしく「立つ鳥あとを汚さず」そのものだった。普通の人なら(あら、きれいに出てくれてよかったわー、もう荷物を入れるだけね)で終わるだろう。それなのに、夫は「キッチンの引き出しの中や棚をひとつ残らずきれいにする!」と張り切っている。
驚いたのは、前のオーナーがそれをまるで見通していたかのように、キッチンの扉を開けると、掃除のための洗剤類が、山のように残してあった。おかげで、買い物に走る必要も無く、洗面所からキッチン、洗濯室までピッカピカの二乗くらいに磨き上げたのである。とほほ・・・疲れた。
さて、いよいよ荷物が届く翌日の朝8時半。滞在していた4軒隣りの友人宅から歩いていくと、なんと大型トレーラーが新居のドライブウェイに入れず、立ち往生しているではないか。狭い通りの道から90度に曲がっているドライブウェイに、長いトレーラーが左折するのは不可能だ。
そこで、引越し業者は小さなトラックをレンタルし、トレーラーから家具や荷物をトラックに移して家まで運ぶという、気の遠くなるような作業を延々と繰り返したのだった。
さらにトレーラーに乗せられていた私の車は、別の牽引車を調達して降ろさなくてはならず、とにかく予想以上に手間と時間がかかった。
クィーンズビルの家を出るときに来てくれた引越し業者のリックと彼の娘ティーナは、トレーラートラックで1週間の大陸横断をし、ビクトリアでも引越しチームの要となって、現地の助っ人の若者と共に良く働いてくれた。
特にティーナは、食器や絵画を専門に梱包してくれたし、到着したそれらの荷解きもすべてやってくれた。無愛想なティーナは口数も少なく、陽気でおしゃべりなリックとは正反対だが、テキパキと仕事は早かった。引越しが完了したのは、夕方6時過ぎ。
リックは「西で荷物をひろって、またオンタリオ州まで帰るのさ」と言い、ビクトリアでの新生活を楽しんでくださいよ、と笑顔で去っていった。
そう、これからビクトリアでの新しい章が始まるのだ。ハプニング続きの引越し騒動も、無事に済んでしまえば、ただの笑い話である。
2003年11月4日 |
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