エッセイ

人生は波乱万丈ワンダフル前

 父の久しぶりのカナダ訪問を楽しみ、その後子どもたちを連れ、父と一緒に日本へ帰国した。今回は娘のボーイフレンドを招待したので東京、京都、大阪、広島と、あちこち旅行するはめになった。その旅行中、クイーンズビルの家が売れてしまい(もっとも売り出して6ヶ月経っていたが)さあ、それからが大変。

 トロントへの帰路途中、夫とビクトリアで落ち合い、家探しに奔走した。ビクトリアに移住する夢を持ち続けていたが、まさかこんなに早くそのチャンスが巡ってくるとは、私も心の準備が出来ていないうちに、事態はどんどん展開した。

 それにしても、このBC州のハウジング・ブームは、異常である。なにせ、売り家が市場に出ると、たいてい1週間以内に売れてしまう。しかも、売値よりも高い値段で買い手が競争して購入しているという。

 インターネットで必死で家を探してリストアップし、世話になっている不動産屋にハウスツアーを頼むと、その半分以上の家は、もう売れたと言われる。私はパニック状態だった。失望の連続を経験して、一旦トロントへ戻った。

 それから、娘のウエスタン・オンタリオ大学入学のための引越し準備。ビクトリア大学へも合格していたのに、結局オンタリオ州に残りたいと娘は決心したのだ。ああ、子供なんて、ほんとに親の心知らずで、勝手に羽ばたいて行ってしまう!

 娘の引越しの直前に、夫はまたビクトリアへ飛び、必死の家探し。今度はオファーを入れてみたが、同時にオファーした他の家族に負けて失敗。

 クイーンズビルの売れた家は、10月15日に引き渡さなければならないし、次に住む家が見つからないまま、私は9月3日に息子とふたり、不安な気持ちビクトリアに発った。

 慣れない土地で、レンタカーで空港から息子を10月半ばまでホームステイさせてもらう友人宅へたどり着き、それから転校手続き、父母の会などに出席。その上、寸時を惜しんで、不動産屋とあちこち家めぐり。1日は建築業者に付き合ってもらい、郊外にある新興住宅地の見学までした。

 友人は「心配しないで。いざとなったら、借家でしばらく生活して、ゆっくり家を探せばいいのよ」なんて言ってくれるが新聞広告で見る限り、たいていの借家は[Non Smoker/No Pet]が条件になっている。たとえ犬2匹OKの借家が見つかったとしても、引越しを2回するなんて、もう考えただけで頭がクラクラする。あー、もうダメ。最悪の落ち込み状態になって、ナーバスブレイクダウン直前だ。

 9月5日、夫が3日間の滞在予定でビクトリアに到着。空港まで迎えに行き、その足でまたビクトリア市内をドライブしてFor Sale のある家を探し回った。

 滞在先の友人宅から、いつもなら右に車を出すのだが、たまたま左の道へ行ったら、その4軒となりにFor Saleのサインがあるではないか!すぐに不動産屋に連絡し、売り出して3日目というこの家を見せてもらい、気に入ったので翌朝一番にオファーを入れた。今住んでいる家の半分以下の小さな家だが、値段は半分というわけにはいかなかった。理不尽な売値をそのままをオファーし、その代わり10月20日という無理なClosing dateをどうか承諾して欲しい!と祈り続け、期限ぎりぎりの午後5時、交渉成立。ばんざーい!!

 翌日、花束を抱えて家を売ってくれたカップルにお礼に行ったほど、私たちは狂喜した。地獄から天国へ昇った気分だ。

 そして、同じその日の間に、馬2頭を預けるファームも見つけた。ビクトリアから車で約20分のBeaver LakeとElk Lakeのすぐそばで、湖のまわりには延々と続くトレイルや公共の屋外アリーナや馬場がある。まるで乗馬天国を絵に描いたような環境だ。おまけに、アリーナでたまたま口をきいた人は、うちの馬と同じパソ・フィーノ種を持っているという。なんという奇遇な巡り合わせ!

 こんな具合に、土壇場になって信じられないような奇跡が次々と起こり、すべてが軌道に乗って動き出した。あれほど「鬱状態」で、頭の中が真っ白のまま、日常生活そのものが苦痛だったのに、180度転回して一挙に自信回復。

 夫がトロントへ戻った後、私は1週間滞在を延ばして、新居のインスペクション(専門家に家の中や外回りなど調査してもらう)、弁護士、家の保険、銀行との交渉など、すべて一人でやりこなすことができた。

 亡くなった母か、神か、天使かわからないけれど、奇跡的に助けられたとしか思えない。とにかく偉大な力に感謝するのみだ。

 あと引越しまで2週間を切った。家が小さくなるので、ほとんどの家具は親戚や友人に譲り、執着しないで身軽に引越しを乗り切ろうと思っている。それにしても、3年前に引越したばかりの家に、どうしてこんなにガラクタがあるのだろう。これからの生活は、物を抱え込まないシンプルライフにするつもりだ。20年間のオンタリオでの思い出を胸に、新しい人生のチャプターが始まろうとしている。波乱万丈で綱渡りの人生だけど、なんだか胸がわくわくする!

 2010年にはバンクーバー冬季オリンピックが開催されるし、これからB.C.州は世界の注目の的になると思う。

 今後、ビクトリアから発信する「おもしろカナダライフ」を乞うご期待くださいね!

2003年10月1日



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