動物小話

オークション


 馬業界のネットワークは広い。

 ホース・トレーダー(馬の売買人)、牧場主、調教師、装蹄師、そして乗馬好きの人々が集まって、情報交換したり交流を深めたりする場所のひとつに、オークションがある。馬関係の雑誌を読むと、ほとんど毎週のように、各地でオークションが開かれているのがわかる。

 オンタリオ州クレアモントにある「バーキー・オークション」では、毎週月曜日に"セリ"が行われる。夕方から続々と集まって来る人たちの中には、トレーラーに馬を乗せた人、農機具を売るためにトラック一杯積んできた人、バーゲン品を目当てに空っぽのトラックでやって来る人などさまざま。

 今回、我々の目的は、夫のウェスタン・サドルを売ること。買ってから、もう何年か経つのだが2、3度しか使っていないので、新品同様。125ドルぐらいで売れればいいや、と夫は言う。

 受付けでオークション番号を登録し「751」と書かれた札をもらった。会場では、もうすでにオークションが始まり、ホルター(無口)、引き綱、ブライダル(頭絡)、ブランケットなどの馬具が次々に売りさばかれていく。オークショニアーを囲むようにコの字型に座っている人々が、札を上げ下げして、セリ値が上がっていく。

 オークショニアーの早口の英語はついていけない。何を言っているのか、全然わからない。でも人々の札はあちらで上がり、こちらで上がり、早いアクションの展開だ。同じ品が複数ある場合は、最終セリ値で他の希望者に売られる。最低保証価格があるので、叩き売りにはされず、売れ残る物品もある。 髪の毛をちょっとさわったら、夫から「手を上げるなよ!」と叱られた。そう、オークション中は、まぎらわしいジェスチャーをしないこと!

 会場の外では、大型の農機具からローンチェアまでがオークションされていた。いかにもファーマー風の男たちが輪になって、オークションは進んでいく。

 屋内アリーナに入ってみると、これからセリに出される馬たちが、ウォーミング・アップの最中。さらにアリーナの隣には、数頭の馬が臨時の馬房につながれて出番を待っている。

 「バーキー・オークション」のような小規模のオークションで売られる馬は、駄馬が多いと一般に言われるが、確かに素晴らしい血統馬には、まずお目にかかれない。たいていクロス(雑種)で、馬主が売ろうと努力しても売れずに、とうとうこのオークションに連れて来るというケースが多い。

 経済的に馬を飼う余裕がなくなったり、乗り手が大学に入り、乗馬をする時間がなくなってとか、馬を手放す理由はいろいろだ。

 1頭ずつ順番に、つながれている馬を撫でながら見ていくと、ひえーっとびっくりする生き物2頭に出会った。

 1頭は小型のポニーとシマウマのクロス。もう1頭はシマウマとロバのクロスで名づけて「Zeedonk」!両方とも身体と四肢に、うっすら縞模様が見える。同じ蹄(ひづめ)を持つ動物とはいえ、こんな雑種を生み出した勝手な人間に腹が立ってきた。これは神の冒涜ではないか!おそらく、どこかのペッティング・ズーにいた動物で、最初は物珍しさで結構受けたけれど、もう飽きられてオークションにたどり着いたのだろう。なんとも哀れな動物たちだ。

 さて、夫が出したウェスタン・サドルは、幸運にもセリ落とされた!しかも230ドルという予想をはるかに上回る値がついて。オークション会場に手数料として15%支払い、手元には税金を引くと$193.08残った。めでたし、めでたし。

 「帰路たどる 悲喜こもごもの せりの市」

初出「志摩夕美のやじ馬通信第6話」 「日加タイムス」2002年8月2日号



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