
誰でもそうだと思うが、初めて自分の馬を持つということは、すごく嬉しいものだ。ちょうど運転免許を取って、いよいよマイカーを持つという心境に似ている。レイディーは、私が2人目の子供を妊娠中に我が家へやってきた。まだ乗馬すらしたことがない私に、気の早い夫はさっさと馬を買ってしまった。歩いて行ける距離の近所のファームにレイディーを預け、夫はしょっちゅう乗馬に出かけた。もともと彼は子供の頃から馬が大好きで、大学生になるまで乗馬を続けていたので、また自分の趣味が復活したとばかりに大喜びだった。 そして私にこう言ったのだ。「子供が生まれたら、すぐに乗馬を習うように。ぼくは2頭目の馬を買うからね」 もうほとんど強制的に、子供が生後数週間で私は乗馬レッスンを始めた。最初はグループレッスンを夫が子供の面倒をみてくれる夜間に取り、少し上達したら昼間ベビーシッターを呼んで、プライベートレッスンを取った。 乗馬をしたことがある人ならわかるだろうが、馬の上に乗るとまわりの世界が違って見える。視線が高くなると同時に視界も一挙に広がるからだ。温かい馬の体温を感じながら、馬と一緒に呼吸して運動することは、他のスポーツでは味わえない感動を得ることができる。 いつのまにか私は乗馬が大好きになっていた。いよいよレイディーに乗って野外騎乗できるようになって、乗馬はますます面白くなった。その頃には夫はレイディーを私に譲り、自分用の馬(名前はミスティーク)を持っていたので、ふたりで近所にある公有の森の中を馬で散策した。 乗馬仲間もだんだん増え、グループで野外騎乗することもたびたびあった。そんな時、ベテランの乗馬友達は「レイディーはあんたには、難しすぎるんじゃない?」とよく言った。 確かにレイディーは、おとなしい馬ではなかった。キャンターする時は、はみをぐっと噛んで頭を下げ、一目散にギャロップする。スピードを落とそうと手綱を引こうにも、レイディーの力にはかなわない。特に他の馬が多ければ多いほどまるで競馬のように、すごい速さで走るのだった。 そして、いつもの林道に見慣れないものがあったりすると、突然横飛びしたりピタッと止まったりするので、その反動で何度落馬したことか。ただし、食いしん坊のレイディーは、私が落ちても走り去ることなく、ゆうゆうと脇道に生えている草を食べていた。 モーガン種だったので、たて髪としっぽは有り余るほどふさふさしていた。からまってしまう毛をブラッシングするのが大変だった。馬場の中に私が入ると、すぐに擦り寄ってきた。頭をぐいぐい私に押し付けるので、思わずのけぞってしまうほどに。 ちょっとずうずうしい姉御肌で、ミスティークにもボス風を吹かし、餌を食べるときは、気をつけていないとレイディーがミスティークを押しやって横取りしようとした。 それでも、障害者のための乗馬のイベント用にレイディーを提供した時は、まるで別人(別馬?)のように大人しく障害者の人たちを乗せて馬場の中をまわった。ちゃんと乗り手のことを理解しているかのように。 タフでいい馬だったけれど、小柄な私にはなかなかコントロールできなかったので、大柄な買い手が見つかって売ってしまった。当時9才だったから、もう今は生きていないだろうけど、やっぱり初めての馬だったから、レイディーのことは一番たくさん思い出に残っている。 |
ホーム‖戻る
Copyright (C) 2001 Yumi Schemmer. All rights reserved.
This site best viewed using 800 x 600 screen resolution and True Colour display.