動物小話

障害飛越競技


 9月26日-29日にかけ、ニューマーケットにあるYork Equestrian Centre(ヨーク乗馬センター)でショー・ジャンピング(障害飛越競技)"Tournament of Champions"が催された。

 4日間にわたって、ジュニアレベルから大人のアマチュアレベル、そしてドッグショーまで盛り込まれたイベントの中で、最も注目されたのは賞金5万ドルと2003年型メルセデスベンツCLK320・スポーツカーの1年間無料リースが副賞のCanada Cup。カナダやアメリカから、インターナショナル級の選手が参加するレベルの高い障害飛越競技だった。

                   基本ルール

 障害飛越は、馬と騎手が一体となり、コースに配置された障害をいかに早く、いかにミスなく飛越するかを競う。障害の高さは、競技のレベルによって変わるが、今回のCanada Cupは6フィート(1.8m)でオリンピック並み。

 高さだけの「垂直障害」と前列のバーが後列より高く、幅がある「オクサー障害」の2種類があり、馬と騎手のジャンプの体勢は、障害の種類によって違ってくる。馬に最も負担をかけず、バランスを保ったままジャンプするには、馬、騎手ともに長年の訓練が必要だ。

 バーを1回落下させるごとに-4の減点。また、馬が障害の前でジャンプを拒否した場合-4の減点で、2回目の拒否は選手の失権となる。落馬は失権。また、規定タイムを1秒超過するごとに-1の減点で、制限タイム超過は失権という具合に、なかなか厳しいルールである。減点が少ないほど、そして走行時間が速いほど得点は高くなり、総得点の高さで勝者が決まる。

                   緊張感いっぱい!

 ヨーク乗馬センターに到着すると、屋外リングの2箇所に設置された階段式ベンチは、もう観客で埋まっていた。午後2時、アメリカ国歌とオーカナダの両方を起立して斉唱した後、いよいよ競技開始。 33人の騎手が、困難な障害飛越にチャレンジする。馬を走らせるコースもきわめて難しく、ジャンプの着地直後に馬の向きを鋭角に転換させ、次の障害へと体勢を整えなくてはいけなかったり、トリプルバーの飛越があったり。トリプルバーのジャンプは馬の足並みを整えるのが、騎手の実力のみせどころ。4歩、2歩、2歩と、あくまでもリズムをくずさず、しかも馬のスピードをコントロールしながらのジャンプだ。

 馬は常にキャンター(駈歩)で飛越する。騎手は「ハンターシート・ライディング」と呼ばれる2ポイントの騎乗法で、上体を前に傾けてかかとを下げ、重心をあぶみの真上にかける姿勢でジャンプする。物理で習った慣性の法則そのものを、この障害飛越で見ることができる。

 障害飛越が人気の高いスポーツである理由は、競技の緊張感の高さと、誰にでも競技の進行が理解できるからだろう。しかも、躍動感あふれる美しい馬の姿を眺めていると、ジャンプする馬が一瞬止まって、一幅の芸術作品を見ているような気分になる。

 観客からは、「あー」とか「おー」とか、ため息ともつかない声が漏れ、最後の障害をクリアーすると、誰もがほっとした表情になり、馬と騎手への惜しみない拍手が送られる。

 この日のために、どれほどの時間と労力をかけて訓練したことだろう、どの騎手も最善のパフォーマンスをしてほしいと思うと、息をつめて手を握りしめ、思わず身を乗り出す。

 競技にアクシデントはつきもので、ケベックから出場した騎手は、馬が2回拒否して失権し、落馬のため失権した騎手はふたり。また、競技の途中で力が出し切れなかったのだろうか、退場してしまった騎手もいた。

ちょうど2ヶ月前に落馬事故を起こして、鎖骨を折った私は、そういう脱落組に深く同情してしまうのだった。

                  夫婦で賞を総なめ

 Canada Cupの優勝に輝いたのはオンタリオ州ショーンバーグ出身のエリック・ラマーズ氏(34才)。彼は1998年、99年のグランプリ・チャンピオンでもあり、競技前から優勝が噂されていた。そして総合点で優勝し、ベンツのスポーツカー(1年無料リース)を得たのはエリック氏の妻、メガン・ラマーズさん。

 ラマーズ氏はつい先日開催されたカルガリーの「スプルース・メドウ競技会」にチーム・カナダのひとりとして参加したばかり。ふたりの今後の活躍が期待される。

初出「日加タイムス」志摩夕美のやじ馬通信第8話・・2002年10月25日号



ホーム戻る

Copyright (C) 2001 Yumi Schemmer. All rights reserved.
This site best viewed using 800 x 600 screen resolution and True Colour display.